鐔(つば)という刀装具には、正面から見える意匠だけでなく、その「裏側」にも独特の魅力があります。
今回は、私自身が惹かれた一枚の鐔を通して、“裏の美しさ”についてお話ししてみたいと思います。
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もくじ
鐔との出会いと、再びの「蜘蛛」
蜘蛛の目貫を購入してから、わずか10日後。
今度は、同じく蜘蛛を意匠にした鐔に出会い、迷わず手に取りました。
なぜ蜘蛛?と思われる方もいるかもしれません。
その理由については、以前の記事で詳しく書いていますので、もしよければそちらもご覧ください。
裏側に惹かれる理由
鐔の裏面には、表ほどの凝った意匠がないことが多いです。
しかしその 簡素さや余白の美しさ にこそ、強く惹かれるものがあります。
ときには、ほとんど何も彫られていない裏面に、無言の品格 のようなものを感じることも。
控えめな仕上げの中に、刀装具全体の調和や静けさが宿っているように思うのです。
まず裏から見るという習慣
私の場合、鐔を手にしたときは、まず裏側から見るようにしています。
不思議なことに、裏側に惹かれる鐔は、表も自然と魅力的に感じられるのです。
しかしその逆──表に惹かれて手に取ってみても、裏にしっくりこないと購入に踏み切れないこともあります。
どうせなら、長く愛でていたい。
そう思うからこそ、裏側にも共鳴できる鐔を選びたくなるのかもしれません。

素材としての意外な好み
鐔というと、やはり 鉄のもの が多く見られます。
重厚で落ち着いた佇まいは、どこか信頼感のようなものがあります。
けれど私自身は、鉄以外の鐔──四分一や真鍮、山銅などにも静かな魅力を感じています。
金属ごとに異なる光沢や色味が、鐔全体の雰囲気を微妙に変えてくれるのです。
柔らかさや品のある表情が引き出されるのも、こうした素材ならではだと感じています。
最後に
鐔という刀装具は、正面の意匠だけでなく、裏面や素材の選び方によっても印象がまったく異なります。
表ばかりに目を向けていたころより、裏側にも意識が向くようになってから、鑑賞の楽しみが増えたように感じています。
機会があれば、ぜひ一度、鐔の“裏側”に注目してみてください。
きっとそこにも、小さく静かな美が宿っているはずです。

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