小さな目貫が、見え方を変えた話

雨宿りで偶然出会った日本刀。
そこから、刀装具の世界に少しずつ引き込まれていきました。

その中でも、最初に手にしたのが「目貫」でした。

正直に言うと、最初はそこまで深く考えていませんでした。
小さくて扱いやすい。
それくらいの理由です。

でも、今振り返ると、この選択がすべての始まりだったと思います。

選んだのは、蜘蛛が彫られた一対の目貫でした。

最初に見たとき、少しだけ違和感がありました。
「なぜ蜘蛛なんだろう」と。

ただ同時に、なぜか気になってしまったんです。

吉兆や商売繁盛の象徴とも言われている。
そういう知識は後から知りました。

でも購入を決めた理由は、もっと単純で、
「気になるから」でした。

この感覚は、あとから振り返るとかなり重要でした。

————

そこから、目貫を見る時間が増えていきました。

手のひらに収まるほどの小さな装飾なのに、
なぜこんなにも惹かれるのか。

少しずつ、気になり始めます。
他の目貫も見るようになりました。

すると気づきます。

そこに描かれているのは、特別なものではなく、
むしろとても身近なものばかりだということに。

茄子や大根、胡桃。
朝顔や菊、梅。
犬や雀。

「なぜこれが選ばれたのか」
「なぜこれを身につけたのか」

気づいたら、調べていました。

それまで気にも留めていなかったものを、
わざわざ調べている自分がいたんです。

少し不思議な感覚でした。

でも同時に、どこか面白かった。

目貫を見る。
現実の草花や動物を見る。
また目貫を見る。

その繰り返しの中で、少しずつ見え方が変わっていきました。

ただの装飾ではなく、
「何かを写したもの」として見えるようになってきたんです。

同じ目貫を何度も見返していると、そのたびに違うことに気づきます。

最初は気づかなかった細部。
形の意味。
構図の意図。

“わかる”というより、
“馴染んでくる”ような感覚でした。

ここで、ひとつ思ったことがあります。

なぜ人は、こんなにも小さなものに、
ここまで手間をかけたのだろう。

そして、なぜそれを身につけようとしたのか。

もしかすると、当時の人にとっては、
「身の回りのものをどう見るか」
それ自体が大切だったのかもしれません。

そう考えるようになってから、
日常の見え方が少し変わりました。

道端の草。
ふと目に入る虫や鳥。

それまで見過ごしていたものに、
少しだけ目が留まるようになったんです。

大きな変化ではありません。

でも、自分の中では確かな変化でした。

目貫のような小さな世界に触れることで、
見えるものが少し変わる。

そんな感覚があります。

もしよければ、少しだけ考えてみてください。

普段、何気なく見過ごしているものの中に、
気になってしまうものはありますか。

それは、なぜ気になったのでしょうか。

少しだけ立ち止まって考えてみると、
見え方が変わるかもしれません。

ゆみのひとこと

まさかの蜘蛛推し!嫁はちょっとびびってます。
「縁起がいい」って言われても、リアルな見た目には慣れません…。
我が家では、蜘蛛が出ると「くもたろう」とか名前をつけて、主人が「絶対に退治しちゃだめ!」って言ってきます。
つまり、我が家には“家族としての蜘蛛”がいます(ほんとに)。
次はもうちょっと可愛い目貫がいいな…。

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