麒麟という存在は、古くから東アジアの文化の中で尊ばれてきました。
日本でもその姿は、美術工芸や刀装具の中に息づいています。
そして現代、小説『十二国記』を通して、私たちはまた別のかたちで麒麟に出会っています。
今回は、武士たちが愛した「麒麟」の姿を、文化と想像の両側面から見つめてみます。
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もくじ
麒麟のイメージ
「麒麟」と聞いてどんなイメージを持っていますか?
一般的にはビールや炭酸飲料の名前のイメージが一番に思い浮かぶ方が多いようですね。
そのパッケージに描かれているのが麒麟です。
もちろん動物園にいる首の長いキリンとは別の動物?です。

麒麟とは
麒麟は紀元前から中国の伝説上の聖獣で慶事や太平の時に姿を見せるなど幸福の象徴とされています。
鳳凰と対で描かれることもあり、古来から大切にされていた聖獣です。
その姿は鹿、顔は龍に似ていて、牛の尾、馬の蹄、1本の角があると言われています。
角は数本あったり角のない麒麟もいるようです。
「麒」が雄で「麟」が雌を表すと言われていて、この辺りは小説「十二国記」に出てくる麒麟も同じで、名前で性別を表しています。
美術工芸品にみる麒麟
正倉院宝物に収蔵されている屏風、着物、絵紙などに麒麟が描かれています。これらの正倉院文様は格調高い文様で、日本の文様の中では最古と言われています。
それ以降の時代でも麒麟の青磁の置物、鏡、皿、壺などの美術工芸品のモチーフとしても使われていました。
鳥取の稲荷神社には室町時代に作られたと伝えられている麒麟の獅子頭が現存しています。
現代でも五月人形の兜に麒麟をモチーフにしたものがあります。これは、「麒麟児」という言葉にあやかって優れた才能のある少年の成長を願って飾られています。
刀装具にみる麒麟
麒麟は吉兆の象徴なので戦国武将それ以降の武士の刀装具として麒麟の文様が使われています。特に鍔、目貫、縁頭などに多く使われています。
素材は鉄や銅、赤銅、銀と銅を合わせた四分一、真鍮など、いろいろな素材が使われています。
戦国武将と麒麟
織田信長は1565年から麒麟の「麟」の字を花押として文書に用いているという説があります。
異論もあるようですが麟の字をデザインした花押ブローチも販売されていました。
徳川家康公を御祭神にした日光東照宮の陽明門の中心には麒麟の彫刻が施されています。
「十二国記」からみた麒麟
「十二国記」は1991年から読まれている1200万部を超える人気の異世界ファンタジー小説です。
2002年にはアニメ化もされています。
2019年に18年ぶりの新作が刊行され、30年を経ても人気がある作品です。
この物語に出てくる麒麟は王を選び、王の補佐をしながら共に生きる聖獣として描かれています。
性格は穏やかで慈悲深く殺生を好みません。
一般的な麒麟と同様に平和をもたらす聖獣と位置づけられています。
十二国記の麒麟と王との誓約は、麒麟が王の前で叩頭し、
「天命をもって主上にお迎えする。御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと、誓約申し上げる」と言い、
王は「許す」と告げて誓約される。
ひなほは作品のファンなので、この誓約で一生が幸運に恵まれるのなら誓約したいと思っています。
本物の麒麟を側に置くことはできないですが、目貫や鍔なら気軽に身の回りに置くことができます。
麒麟を側に置いて幸運を願いたいと思うも案外と簡単なのかもしれませんね。

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